
Token2049。アジア最大の暗号資産イベントで、業界幹部たちの話題が変わりました。
つい1〜2年前まで「シンガポール vs 香港、どちらがアジアの暗号資産ハブになるか」が定番の話題でした。ところが今、その会話に新しい名前が登場しました。日本です。
同じ目標に向かって三カ国がそれぞれ異なる道を選びました。その違いが個人投資家にそれぞれ異なる機会を生み出します。
香港 — 中国の隣でリテールまで全面開放
香港の戦略は明確です。規制を素早く整備し、その中でできることは最大限に認めるというものです。
2025年8月、香港はステーブルコイン規制法を発効させました。リテール投資家にまで暗号資産取引を全面解放し、仮想資産取引プラットフォームライセンスを10件以上発行しました。税制も強みです。香港は個人の暗号資産収益にキャピタルゲイン税を課しません。
スタンダードチャータードはAnimoca BrandsとHKTと合弁会社を設立し、香港でステーブルコインを発行することにしました。アントグループの海外法人も香港のステーブルコインライセンスを申請する予定です。伝統金融と暗号資産が香港で合流する絵姿です。
香港の強みを一目で
個人の暗号資産収益にキャピタルゲイン税なし | 法人税16.5%(シンガポール17%、米国21%より低い)
リテール取引全面解放 | 仮想資産取引プラットフォームライセンス10件以上発行
中国隣接の流動性 | 香港ドルステーブルコイン+RWAトークン化インフラ構築中
シンガポール — 速く走ってブレーキを踏んだ
シンガポールはかつてアジアの暗号資産ハブの代名詞でした。しかし2023〜2024年に規制を急速に強化したことで雰囲気が変わりました。
2025年6月に改正された金融サービス・市場法(FSMA)は、海外取引所がシンガポールユーザーにサービスを提供する場合も現地ライセンスを義務化しました。クレジットカードでの暗号資産購入禁止、取引所の最低資本要件も導入されました。MPI(主要決済機関)ライセンスは30件以上発行されましたが規制コストは大幅に上昇しました。
しかしシンガポールにはまだ強力な武器があります。個人のキャピタルゲイン税なし、英語公用語、アジア最高水準の金融インフラです。機関向けB2B暗号資産サービスではシンガポールが依然として強みを持っています。
日本 — 最も静かに、最も遠くまで来た
Token2049でBlockdaemonのCEOはこう語りました。「日本はしばらく何もできない国でした。でも今は機関がスケールできる規制インフラを持つ、爆発寸前の市場になりました。」
世界で初めて暗号資産を法制化した国らしく、日本の規制インフラは最も緻密です。顧客資産の分別管理、国内バリデーターノードの運用義務、取引所ハッキング対策の緊急準備金 — 銀行と同じ基準が暗号資産に適用されます。
2026年から暗号資産の譲渡所得税が一律20%に統一されます。これまで最高55%まで課されていた税率が株式・債券と同じ水準に下がるのです。そして決定的なことに、日本のETHステーキング利回り3%は国内国債利回りの30倍です。機関投資家にとってこれは無視できない数字です。
| 日本の暗号資産市場の現状(2025年基準) 登録取引所32社 | 累計口座数1,200万件以上 | 顧客預け入れ総額5兆円以上 月間現物取引量1.9兆円 | 個人投資経験者のうち暗号資産保有率7.3% 2026年税制改革:最高税率55%→一律20%へ統一予定 |
三カ国の選択、一目で比較
| 国 | 香港 | シンガポール | 日本 |
| 個人税制 | キャピタルゲイン税なし | キャピタルゲイン税なし | 2026年から一律20% |
| リテール解放 | 全面解放 | 限定的 | 解放(ただし厳格な基準) |
| 強み | 中国隣接流動性+スピード | 機関B2B+金融インフラ | 規制成熟度+機関信頼 |
| 2026核心 | RWAトークン化+ステーブルコインハブ | 卸売CBDC パイロット | 暗号資産ETF+ステーキング |
個人投資家の実行ポイント
三カ国がそれぞれの方法で暗号資産ハブを作っていくことは、個人投資家にとって選択肢が広がるということでもあります。
- 日本の税制改革を積極活用する。2026年から日本の暗号資産譲渡所得税が一律20%に統一されます。日本の取引所(SBI VCトレード、bitFlyer、GMOコイン)を通じた投資はこの税制メリットを直接受けられます。特にETHステーキングは国債利回りの30倍という点で、機関資金流入の先行指標になりえます。
- 香港上場の暗号資産ETFをポートフォリオ組み入れ経路として検討する。香港はアジアで最も多様な暗号資産ETFを運用中です。国内証券会社を通じて香港ETFにアクセスでき、直接取引所口座なしでもBTC・ETHへの間接投資が可能です。キャピタルゲイン税のない環境で運用されるため、コスト構造も有利です。
- アジアの暗号資産規制ニュースをグローバル資金フローのシグナルとして読む。アジア太平洋はグローバル暗号資産市場シェアの3分の1以上を占め、最も速く成長している地域です。香港・シンガポール・日本で規制進展ニュースが出るたびに機関資金の流入が伴います。このニュースをBTC・ETHの中長期買いシグナルとして活用できます。
次回予告:ステーブルコイン — Clarity Actの最大争点にして機会
EP.5では、香港・シンガポール・日本がすべて共通して最初に規制を整備した資産、ステーブルコインを取り上げます。年間24兆ドルを超えたステーブルコインがなぜ次のグローバル決済インフラの核心になるのか、そして個人投資家にどんな機会を生み出すのかを解説します。
※ 本記事は情報提供を目的としており、投資判断と責任はご本人にあります。